夏になると増える相談
例年、夏になると「うちのおばあちゃんはエアコンが嫌いでつけてくれないんです」というご相談を受けることが増えます。年配の方はエアコンが苦手な人が多いようで、猛暑日でも扇風機しか使わない方も少なくありません。日本の夏は昔より気温が高くなっており、TVなどでもしきりに「エアコンをつけるよう」注意喚起していますが、熱中症で搬送される高齢者は後をたちません。特に認知症の人は暑さに鈍感になっていることが多いため自宅内で熱中症になることも懸念されます。
数年前までは解決できなかった・・・
専門医として日々、認知症にまつわるさまざまな困りごとについて相談を受けますが、すぐに解決できるかどうかは別にして「他のお宅ではこうやっている」「介護サービスをこんな風に組み合わせて」「薬の使い方を工夫しましょう」など何らかの助言をできることがほとんどです。しかし、夏場に「親がエアコンをつけてくれなくて困っている」という悩みにだけは的確な回答を持ち合わせていませんでした。
ご家族が同居していれば「喧嘩になってでもエアコンをつけてあげて」と助言していましたが、ご家族と別に暮らしている場合はお手上げです。なかには暑い時期だけショートステイを利用する方もいらっしゃいますが、介護認定や病状・生活習慣などは人それぞれですので”これ”といった対策が提案できずにもどかしく思っていました。
IoTで何ができる?
IoT技術が進みさまざまなモノがインターネットに接続されるようになったことで、認知症ケアにおいても新たな対策が提案できるようになりました。スマートリモコンを活用することで、屋外からエアコンなどの家電を操作したり室温を確認することができます。
※スマートリモコンとは赤外線通信のリモコンに対応する家電を操作できるもののことです。 それぞれの製品に対応したスマホアプリ上で、赤外線通信のリモコンを登録することで使用できます。
必要なもの・準備すること
スマートリモコンを導入するためには、認知症のご家族が生活するお宅でインターネットが利用できてWi-Fi(ワイファイ)が使える必要があります。
※Wi-Fiの導入についてはインターネット回線を契約している業者にお問い合わせください
スマートリモコンは数千円から購入できますが、室温をスマホで確認できるものがオススメです。スマートリモコンに対応したアプリを(ご家族の)スマホにインストールし、リモート操作したいエアコンをスマートリモコンに登録します。スマホがインターネットにつながっていれば、屋外・遠方からでもエアコンを操作できます。製品によっては「室温が〇℃以上になったらエアコンを入れる」といった条件設定ができるものもあります。
スマホやインターネットに不慣れな方にはハードルが高い作業だと思いますが、いったん設定してしまえばアプリ操作自体は非常に簡単ですので、お子さんやお知り合いの方などで詳しい方を頼って導入をご検討ください。
それでも万全とは言えないが、、、
ここまでIoTの環境を整えてもうまくいかないこともあります。例えば、エアコンのリモコンが見つからないと椅子に登ってエアコンのコンセントを抜いてしまう、という話もしばしば耳にします。また窓を開けられてしまえばエアコンの効果は半減です。それでも居室の気温を遠方から確認できるだけでも一つの安心にはなりますし、あまり室温が高くなるようなら電話で対応を助言することもできるはずです。
IoTを補助的に活用しながら、認知症のご家族の状態に相応しい環境で見守れるよう緩やかにライフスタイルを軌道修正することが本質だろうと思います。
※クリニックでもスマートリモコンを設置しています。
※nature remo miniを薄型のUSBアダプタに両面テープで接着しています。