当院に通院中でレカネマブ(レケンビ®)についてご質問いただいた方にご覧いただくためのサイトです。SNS等での共有はご遠慮ください。

2023年9月25日にアルツハイマー病の新薬「レカネマブ」が正式承認されました
診察で投与対象、手順やスケジュールについてご質問いただくことが増えましたので特設ページを作成しました。2024年8月時点の情報を基に作成しております。あらたな情報が入り次第、アップデートする予定です。

投与の対象者

2023年12月に薬価が決まりレカネマブを投与することが可能になりましたが、高額薬のため厚労省が提示する「最適使用推進ガイドライン」に則って治療を進めることになります。ガイドラインでは軽度認知障害(認知症の予備群)から初期のアルツハイマー型認知症の患者さんでMMSE(簡易問診検査)が22点以上であることが要件とされています(注1)。

アミロイドの有無を確認する必要がある

レカネマブは脳内にたまったアミロイド(アルツハイマー病の原因と考えられている異常なタンパク質)を除去することで効果を発揮する薬ですので、アミロイドがたまっている人が投与対象になります。しかし、専門医が診断基準に基づいてアルツハイマー型認知症と診断した患者さんの中にも、実はアミロイドがたまっていない(アルツハイマー病ではない)ケースが30%程度紛れ込んでいることが知られています。したがって、当院で「アルツハイマー型認知症」と診断されていても、レカネマブの対象かどうかを判断するためには必ず脳内アミロイドの有無を確認することになります。

この度、体内に放射性同位元素と呼ばれる薬剤を注射して脳内のアミロイドを観察するアミロイドPETという画像検査が保険診療で実施できることになりました。費用は負担割合にもよりますが、窓口支払金額が数万円で実施できる見込みです。ただし、アミロイドPETを実施できる施設要件も厳しく定められており、PET施設を有していても保険診療で検査を実施できない医療機関もあります。

治療できる施設が限られている

ガイドラインにはレカネマブの治療を実施できる施設要件も厳しく規定されています。さまざまな要件を満たすのは豊橋市民病院・豊川市民病院など限られた医療機関です(当院ではレカネマブの治療を行えません)。レカネマブの治療を受ける期間(原則として1年半と決められています)は治療施設に転院して通院治療をしていただきます。治療スケジュールとしては2週間に1度のペースで1回1時間の点滴を受けていただくことになります。治療費用は年間で298万円(+MRIなどの検査費用・診察費用等がかかります)とされていますが、それぞれの負担割合に応じた窓口負担金で済むことに加え、高額療養費制度も利用できます。

レカネマブの効能について

これまで保険診療で投与されてきた症状改善薬と呼ばれる治療薬とは異なり、アルツハイマー病の原因に直接働きかけることができる期待の新薬ですが、残念ながら失われた記憶を取り戻す効能や、認知機能が改善する効果はないことがわかっています。保険承認の根拠となった論文のデータをお示しします。

1年半の観察期間の中で得られた2種類のデータを示しています。それぞれのグラフでオレンジ色の折れ線グラフがレカネマブを投与された患者さんのデータ、青色の折れ線グラフがプラセボ(偽薬)を投与された患者さんのデータです。上のグラフはアミロイドPETで脳内のアミロイドの蓄積量を評価したデータですが、レカネマブを投与することでアミロイド量が減っていることが明らかです。下のグラフはADASと呼ばれる問診検査の結果です。ADASは点数が高いほど認知機能が低下していることを示していますので、スコアが高くなるほど(縦軸が下にいくほど)認知機能が悪化していることを示しています。

確かにプラセボよりはレカネマブを投与された患者さんの方が低下の速度・程度は緩やかなものの、1年半の間に認知機能が悪化していることが読み取れます。統計学的に有意な差を持ってプラセボよりも認知機能低下を遅らせることが証明されたため保険承認に至ったわけですが、レカネマブを投与しても記憶が改善するわけではないことにご留意ください。また、一定の割合で脳浮腫・脳出血等の副作用が起きることも報告されておりますので、治療開始にあたっては治療施設の担当医とメリット・デメリットを相談していただくことになります。

今後の流れについて

ここまでご覧いただいた上で、レカネマブの対象ならぜひ治療を受けたい、というご意向がある方は診察でお申し付けください。
2024年8月時点で豊橋市民病院、豊川市民病院でアミロイドPET・治療をお引き受けいただけることを確認しております。一度治療を開始すると少なくとも半年は同じ病院で治療を続けなくてはいけません(副作用の確認をするため同じ施設・同じ条件でMRI検査を定期的に実施しなくてはいけないからです)。最低、半年間は隔週で通院できる病院での治療導入をご検討いただくことをお勧めします。
病気がすっかり治るものでない以上、診察でもご案内している通り病状に応じて生活スタイルを見直していくことが本質だろうと考えています。さまざまな治療の可能性を模索しながら、並行してご家族の関わり・支援体制を整えていくこともご検討ください。

※注1)当院では認知機能が保たれている患者さんにMMSEよりも難易度が高いMoCA-JやADASといった問診検査を実施している場合もあります。MoCA-Jは17点以下で認知症の疑い、ADASは10点以上で認知症の疑いとされておりますので、MoCA-J 18点以上、ADAS 10点未満でしたらレカネマブの対象になる可能性は高いと考えます。

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