当院に通院中で疾患修飾薬(抗アミロイドβ抗体薬)の投与を検討中の方にご覧いただくためのサイトです。SNS等での共有はご遠慮ください。

2023年9月にアルツハイマー病の新薬「レカネマブ」が正式承認されました。2024年11月には国内で2剤目となる「ドナネマブ」も保険収載されています。
診察で投与対象、手順やスケジュールについてご質問いただくことが増えましたので特設ページを作成しました。2025年11月時点の情報を基に作成しております。あらたな情報が入り次第、アップデートする予定です。

投与の対象者

レカネマブ、ドナネマブともにアミロイドβという蛋白質に直接働きかける抗体を使った治療薬で疾患修飾薬と総称されます。保険診療として治療を受けることができますが、高額薬のため厚労省が提示する「最適使用推進ガイドライン」に則って治療を進めることになります。ガイドラインでは軽度認知障害(認知症の予備群)から初期のアルツハイマー型認知症の患者さんが治療の対象とされています。薬剤ごとに治療を始められる条件が異なっており、レカネマブはMMSE(簡易問診検査:23点以下で認知症の疑い)が22点以上であること、ドナネマブはMMSEが20〜28点が要件とされています(注1)。

アミロイドの有無を確認する必要がある

疾患修飾薬(抗アミロイドβ抗体薬)は脳内にたまったアミロイドβ(アルツハイマー病の原因と考えられている異常なタンパク質)を除去することで効果を発揮する薬ですので、アミロイドβがたまっている人が投与対象になります。しかし、専門医が診断基準に基づいてアルツハイマー型認知症と診断した患者さんの中にも、実はアミロイドβがたまっていない(アルツハイマー病ではない)ケースが30%程度紛れ込んでいることが知られています。したがって、当院で「アルツハイマー型認知症」と診断されていても、疾患修飾薬の対象かどうかを判断するためには必ず脳内アミロイドの有無を確認することになります。

この度、体内に放射性同位元素と呼ばれる薬剤を注射して脳内のアミロイドを観察するアミロイドPETという画像検査が保険診療で実施できることになりました。費用は負担割合にもよりますが、窓口支払金額が数万円で実施できる見込みです。ただし、アミロイドPETを実施できる施設要件も厳しく定められており、PET施設を有していても保険診療で検査を実施できない医療機関もあります。

治療できる施設が限られている

ガイドラインには疾患修飾薬の治療を実施できる施設要件も厳しく規定されています。さまざまな要件を満たすのは豊橋市民病院・豊川市民病院など限られた医療機関です(当院では疾患修飾薬の治療を行えません)。疾患修飾薬の治療を受ける期間(原則として1年半と決められています)は治療施設に転院して通院治療をしていただきます。
薬剤によって治療スケジュールは異なりますが、数週間に1度のペースで1回30分〜1時間の点滴を受けていただくことになります。
治療費用は年間で250万円(+MRIなどの検査費用・診察費用等がかかります)とされています(2025年11月に薬価が引き下げられました)。それぞれの負担割合に応じた窓口負担金で済むことに加え、高額療養費制度が利用できる場合もあります。

疾患修飾薬の効能について

これまで保険診療で投与されてきた症状改善薬と呼ばれる治療薬とは異なり、アルツハイマー病の原因に直接働きかけることができる期待の新薬ですが、残念ながら失われた記憶を取り戻す効能や、認知機能が改善する効果はないことがわかっています。レカネマブが保険承認される根拠となった論文のデータをお示しします。

1年半の観察期間の中で得られた2種類のデータを示しています。それぞれのグラフでオレンジ色の折れ線グラフがレカネマブを投与された患者さんのデータ、青色の折れ線グラフがプラセボ(偽薬)を投与された患者さんのデータです。上のグラフはアミロイドPETで脳内のアミロイドの蓄積量を評価したデータですが、レカネマブを投与することでアミロイド量が減っていることが明らかです。下のグラフはADASと呼ばれる問診検査の結果です。ADASは点数が高いほど認知機能が低下していることを示していますので、スコアが高くなるほど(縦軸が下にいくほど)認知機能が悪化していることを示しています。

確かにプラセボよりはレカネマブを投与された患者さんの方が低下の速度・程度は緩やかなものの、1年半の間に認知機能が悪化していることが読み取れます。統計学的に有意な差を持ってプラセボよりも認知機能低下を遅らせることが証明されたため保険承認に至ったわけですが、抗アミロイドβ抗体薬を投与しても記憶が改善するわけではないことにご留意ください。
ドナネマブもここで紹介したレカネマブと大きな効能・副作用の違いはないとされていますが、治療スケジュールが異なりますので以下の比較表もご参照ください。

あとから発売されたドナネマブの方が、通院頻度・点滴時間の面から負担が少なくて済むように見えますが、性別や年齢など患者特性によって効果・副作用に差が出る可能性も示唆されているため、基本的には患者さん・ご家族が治療薬を選択するものではなく、治療施設の担当医にお任せいただくことになります。
副作用について

抗アミロイドβ抗体薬では、脳のむくみや小さな出血(ARIA)と呼ばれる副作用がみられることがあります。
海外の臨床試験では、ApoEという遺伝子の型によって、この副作用が起こりやすさに差があることがわかっています。おおむね、リスクの低い遺伝子型で10%前後リスクの高い遺伝子型で30〜50%程度に生じると報告されています。(出典:van Dyck CH et al., NEJM 2023Sims JR et al., JAMA 2023
多くのケースではMRIで見つかるだけの軽い変化で、自覚症状がなく自然に治まることがほとんどです。頭痛やめまいなどの症状が出ることもありますが、重症化して入院が必要になる例はまれで、日本ではこれまでに入院を要するような重いARIAの報告は多くありません。
希望される方には、ApoE遺伝子検査をご案内しています(自由診療・費用2万円〈税込〉)
検査を受けることで、ご自身がどの遺伝子型に当たるかを確認し、治療による副作用リスクをより具体的に知ることができます。
結果はあくまで参考情報であり、治療の可否や内容を決めるものではありませんが、ヨーロッパでは、リスクが最も高い遺伝子型の方には、この薬の投与は基本的に行わない方針がとられています。
当院でもこの考え方を踏まえ、安全性を重視して治療方針を判断しています。
※ApoE遺伝子検査の内容や留意点については、解説記事(遺伝子検査の功罪[note記事へ])もあわせてご参照ください。

今後の流れについて

ここまでご覧いただいた上で、疾患修飾薬の対象ならぜひ治療を受けたい、というご意向がある方は診察でお申し付けください。
2025年1月時点で豊橋市民病院、豊川市民病院でアミロイドPET・治療をお引き受けいただけることを確認しております。一度治療を開始すると少なくとも半年は同じ病院で治療を続けなくてはいけません(副作用の確認をするため同じ施設・同じ条件でMRI検査を定期的に実施しなくてはいけないからです)。最低、半年間は隔週で通院できる病院での治療導入をご検討いただくことをお勧めします。
病気がすっかり治るものでない以上、診察でもご案内している通り病状に応じて生活スタイルを見直していくことが本質だろうと考えています。さまざまな治療の可能性を模索しながら、並行してご家族の関わり・支援体制を整えていくこともご検討ください。

※注1)当院では認知機能が保たれている患者さんにMMSEよりも難易度が高いMoCA-JやADASといった問診検査を実施している場合もあります。MoCA-Jは17点以下で認知症の疑い、ADASは10点以上で認知症の疑いとされておりますので、MoCA-J 18点以上、ADAS 10点未満でしたらレカネマブの対象になる可能性は高いと考えます。

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