認知症の鑑別診断

治療可能な認知症

"その"もの忘れは治るかもしれません

認知症とは「なんらかの原因で脳の機能が低下し、生活に支障をきたす状態」と定義されており、基本的に脳の機能低下(認知機能低下)は徐々に悪化することはあっても回復することがない病状を指しています。ところが、一部の体の病気では認知症と似た認知機能低下を起こすものの、体の病気を治療することで認知機能が回復することが知られており、認知症と区別するためTreatable Dementia(治療可能な認知症)と呼ばれています。

治療可能な認知症には硬膜下血腫、水頭症、脳腫瘍といった脳の病気だけでなく、甲状腺機能低下症、ビタミン欠乏症などの体の病気や、うつ病、せん妄、てんかんといった精神神経系の病気が知られています。それぞれの病気に特徴的な兆候や経過があるものの、専門的な検査をしないと認知症と見分けがつかないこともあるため、認知症が疑われる場合は"これらの病気でない"ことを確認(除外診断)することが必要です。

脳の病気はほとんどの場合、頭部MRI・CT検査で異常を検知できます。体の病気は血液検査で診断できますが、一般的な健康診断や病院での採血では必要な検査項目を網羅できていないことが多いため、検査内容を確認する必要があります。

特に見極めが難しいのが精神神経系の病気です。うつ病やせん妄は特定の検査で診断できるものではありませんので、精神疾患の診療経験に乏しい医療機関では判断に迷う場合が少なくありません。また高齢者のてんかんは検査で異常を検知できる確率が低いため、検査で異常がなかったからといって簡単に可能性を除外できるものではありません。精神科専門医としての診療経験を活かして病状を評価し、適切な診断・治療を提供できるよう努めております。

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